家のファサードには、住まい手のセンスがあらわれる。
2026.07.09
街を歩いていると、思わず目を留めてしまう家があります。決して豪華な家ではありません。大きな家でもありません。それなのに、どこか品があり、「素敵だな」と感じる。そんな住まいには、一つの共通点があります。それは、住まい手のセンスが自然とにじみ出ていることです。
家づくりでは、暮らしやすい間取りや家事動線、断熱性能や耐震性能などがよく語られます。もちろん、それらは住まいに欠かせない大切な要素です。しかし私たちは、その前にもっと大切な感情があると考えています。「こんな家に住みたい。」その素直な気持ちです。どれだけ暮らしやすくても、どれだけ性能が優れていても、心が動かなければ住まいは持主にとって特別な存在にはなりません。だから私たちは、暮らしやすさと同じくらい、「シンプルだからこそ、住まい手のセンスが映えるデザイン」を大切にしています。
私たちは、ファサード(住まいの外観)は建物そのものを見せるためではなく、住まい手の価値観を映し出すものだと考えています。だからこそ、デザインを過剰に飾り立てることはしません。複雑な屋根。多くの色を使った外壁。必要以上の装飾。それらは完成した瞬間は目を引くかもしれません。しかし年月を重ねるほど、住まい手らしさよりも建物そのものが主張してしまうことがあります。
一方で、シンプルなファサードには余白があります。
・白い三角屋根の家。
・白いハコ型の家。
無駄を削ぎ落としたフォルムだからこそ、植栽が映える。玄関まわりの照明が映える。お気に入りの自転車や一台の車が映える。季節ごとの草花や、家族の暮らしが自然と風景になります。主役は家ではありません。その家で暮らす人です。だから私たちは、住まい手の個性が引き立つデザインを目指しています。
シンプルとは、何も足さないことではありません。住まい手の暮らしや価値観が主役になるように、余計なノイズを消すことです。
白い壁に映る木々の影。玄関先の一鉢の植物。お気に入りの自転車や、一台の車。シンプルなファサードだからこそ、それらすべてが住まいの表情になります。私たちがデザインしているのは建物ではありません。住まい手のセンスが自然と映える「余白」です。
ファッションも同じです。シンプルな白いシャツは、着る人によって印象が変わります。腕時計や靴、眼鏡の選び方で、その人らしさが生まれます。住まいも同じではないでしょうか。建物が個性を主張するのではなく、住まい手の暮らしやセンスが少しずつ積み重なって、一つの美しい風景になっていく。私たちは、そんな住まいが好きです。
だからこそ、流行を追いかけるデザインではなく、何十年経っても古さを感じにくい普遍的なデザインを大切にしています。シンプルだから飽きない。シンプルだから暮らしが映える。シンプルだから住まい手らしさが育っていく。
そして、シンプルだからこそ、「こんな家に住みたい」と感じてもらえる。住まいは毎日目にするものです。家に帰るたびに少しうれしくなる。ふと外から眺めたときに、やっぱりこの家が好きだと思える。そんな気持ちも、豊かな暮らしの一部だと私たちは考えています。
私たちが目指しているのは、目立つ家ではありません。街並みに自然と溶け込みながら、「なんだか素敵だな」と思われる家。その理由は建物ではなく、そこに暮らす人のセンスがあふれているから。暮らしやすいことは、住まいとして当たり前のこと。その上で、「この家だから住みたい」と思っていただけるデザインを届けたい。それが、私たちがファサードを大切にする理由です。